魔法のようなホントの噺

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「え、それって」   少年の戸惑いを無視するように開始。慌ててルーズリーフに書き込む姿を横目に確認し、続けます。   「通常、使用可能な魔法は限られている。 低位基礎として確立された汎用魔法、護符や方陣を使用する触媒魔法、個々に系統を選択し特化させた固有魔法。固有魔法は人間の構造上、基本的に一系統しか選択できない」   これが少年の今後に重要な意味をもたらすのでしょう。 厳密には間違いですが、入門者には植木鉢の例が用いられます。 人間の魔法の根源は植木鉢程度の大きさで、そこに固有魔法という木を育てていくという考え方。 二つ以上の木を植えると、器の成長が追い付けずに割れてしまうのだとか。 もちろん例外は存在します。器が成長し余裕ができた魔法使い、鬼や妖怪、先天的に畑レベルの器を持った規格外。   「故に、一つの道を極める方針を取らざるを得ず、魔道という概念が誕生した。 魔法使いが自分の系統で触媒を使用することは、その道においての最大効率を実現する最も簡単な手段の一つである」   魔法は技術で魔道は生き様とでも表しましょうか。 剣術と剣道の違いみたいなものですね。   「今回の範囲はこれだけです……ん、どうなさいました?」   少年は握った拳を突き出しています。何かを受け取れということでしょうか。   ――ラーメン百円引き   微笑みを浮かべ、受け取っておきましょうか。 終わったら食べに行こう。そう決意するのでありました。
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