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カインは、レースの真っ白なカーテンの隣にある木造のタンスから白いシャツと濃い青のズボン、黒ローブを取り出すと、それに袖を通し、部屋から出ていった。
「カイン様、今日は何で行かれますか?」
玄関で待っていたカグヤが、黒のローブを着たカインに話し掛ける。
「歩いて行く」
「それではカイン様が……」
カグヤはまた誰かに何か言われるのではないかという言葉を飲み込んだ。
カインが何も言わず悲しい瞳でカグヤを見つめていたから。
「大丈夫。もう慣れたし、どっちにしろ何か言われるよ……」
「カイン様……」
「それじゃ行ってくる」
カグヤは何も言えずその背中を見送った。
光の大貴族の住む家の門はとても大きくて、カインの背中はやたらと小さく見えた。
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