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「はぁ、やっぱり歩きで行かなければよかったかな……」
カインは徒歩十分の距離にある学園に向かって、真っすぐ伸びた整備されている土の地面を歩いていた。
所謂、裏道を歩いているカインだが人が少ない分、度々聞こえる罵声や笑い声、耳が痛くなるようなひそひそ話、それが余計にカインの耳に入り、ため息を作っている。
しかし、これでもまだ高等部二年になってから少しはマシになったほうだ。
それは妹効果だろうか……それともまた別な効果なのかをカインは知らない。
「おっす!!」
そんな肩を落とすカインに後ろから声がかかる。
カインが振り向くとそこには、真っ赤な短髪で目付きの鋭い男が立っていた。
「ギル先輩!」
「なんだー朝から暗いなー後輩よー」
ギルもまたヴァルディア家という火の大貴族の長男であった。
昔からの知り合いに顔を綻ぶカイン。
「そりゃ暗くもなりますよ」
「ふっ……」
カインが少しおどけて言うと、ギルは鼻で笑い、息を大きく吸い込んだ。
そして、
「人のことぐずぐず言って喜んでんじゃねーぞ!!」
朝の通学路にギルの怒号が響き渡った。
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