落ちこぼれ

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ヴァルドール国、ギルアーク領のとある訓練所。 「さぁカイン様、もう一度魔力を練って下さい」 「もうやってるよ!!」 遮るものが何もない木造の建物の中、女性にしてはやや低い声とまだ若い少年の声が交差する。 カインと呼ばれた少年は、目を深く閉じ、右手を突き出し、左手を右手に添えた。 《燃え盛れ、白火よ、ホーリーフレイム》 カインは目をカッと見開き右手をさらに突き出す。 しかし、発現するはずの魔法は成功せず、残ったのはなんとも気まずい雰囲気だけだった。 「カイン様……」 「カグヤ……何も言うな。余計に悲しくなる」 カグヤは物言おうとしたが、切れ目の長い瞳をすぐに伏せた。 カインの黒い瞳から、悲しみを感じ取ることは難しいことではなかったから。
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