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一方カインと別れたカグヤは、
「旦那様」
「カグヤか……なんだ?」
しばし訓練所で悩んだ後、カインの父であるシャインの書斎へ訪れていた。
「カイン様の魔法について何かわかることはないんですか……?」
そう言うとカグヤはメイド服の裾を掴み、腰より少し短い髪を垂らし、顔を俯せた。
端正な顔立ちも歪んでいる。
「またその質問か……知らんと何度言えばわかる?」
「しかし!!」
「くどいぞ!カグヤ!!」
見渡す限りにある本棚に囲まれ、机の上の紙束の隙間から、椅子に座るシャインの眼光がカグヤに突き刺さる。
カグヤはまた黙り、さらに俯いてしまった。
これ以上言っても何も変わらないことを彼女は知っている――カインが魔法を使えないということを。
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