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プロローグ
猛暑の紫外線が死神のように見える。紫外線は見えません。それは小学生でも分かりそうなもの。でも、俺には見える。皮膚を徐々に喰い毟る(くいむしる)死神が。
俺、本田瞭(ほんだあきら)は修行をしている。少しは疲労度を和らげてくれる河原の上で。
右手を腰の位置に、その上に被せる様に左手を添える。
この修行に必要不可欠なものは集中力だ。全身全霊の集中力を使い、火傷するくらいの高密度なエネルギーが、手に集まるようにイメージする。
きたきたきた……。次は行けそうな気がする。
「かぁ~めぇ~●~めぇ~……!!」
喉が潰れそうなくらい、俺は叫んだ。そして、構えた手を全力で突き出した。
「はあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!」
突如、突風が起こった。旋風が辺りの草を掻き撫でる(かきなでる)。
また失敗か。偶然吹いた風は神の哀れみか?
三年間の修行は無駄だったようだ。中学生の俺には、物理学は良くわからない。
だが、戯れに読む本などには、アニメやゲームなどのアレは理論上不可能である、ということが面白おかしく書いてある。
俺が出そうとしているかめ●め波もまた然り。理論上不可能である。
そんな人生つまらないだろう。理論上不可能だからといって、少年の夢を無為に壊して良いのだろうか?
俺は少年と青年の狭間を生きる年頃だ。中学三年生。傍から見たらただの変態なのは自分でも自覚している。
円周率、3.141592653589793238462643383279502884。この位の記憶力はある。記憶力=頭の良さは成り立たない方程式なのだが──。
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