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お決まりの嫌味を言うが、それは文次郎流の注意。
そうわかっている伊作は笑みながら文次郎の手に視線を向けた。
「いくぞ」
そう言うと、文次郎は手をそうっと開けた。
「…わあ、夏虫」
ぼうっ、とした光が手が開くと同時に現れた。
淡く光る地上の星。
文次郎の手の平には夏虫が乗っていた。
曇ってしまい暗い夜空の下の中、夏虫は淡い光を放っている。
そんな夏虫を見つめながら、伊作は口を開いた。
「どうしたのこれ」
綺麗だね、と伊作は人差し指で夏虫をそっとつついた。
すると夏虫は刺激のせいか、一瞬光を消したものの、次には先ほどより強い光を発した。
「学園長の用事の帰り川にいてな。沢山いたから一匹採ってきた」
「なるほど。でも凄いね。本当に星みたい」
人差し指を夏虫の前に出せば、夏虫は伊作の人差し指をゆっくりと上り始めた。
「飛ばないように……よっと」
上手く誘導すると夏虫は伊作の手の平に大人しくおさまった。
「空には星見えないのに……ここに星に似た光あるなんて、なんか不思議だね。」
「本物はさすがにやれねぇからな」
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