【果物ナイフ】(GX/十亮)

2/2
前へ
/36ページ
次へ
「十代が好きだから……」 だから殺した、愛しい人。 床に転がる十代は微笑まずただ床に突っ伏している。 それがなんだか面白くて笑いが込み上げてきた。 蹴飛ばしてやろうか、なんて考えたり。 「好き、好きだ十代」 冷たくなりかけている愛しい人。 十代の側にしゃがみ込んでそっと十代の顔を抱き締めた。 うつろな目。 血を唾液と一緒にたらす唇。 そして十代の血で汚れる俺の躰。 ああ、何もかもが愛しい。 なのに、 「変な噂を聞いたんだ。お前が俺に隠れて違う奴と付き合っている、という変な噂」 だから確かめようとお前を部屋に誘って尋ねたのに。 「お前は否定しなかったから」 隠し持っていた果物ナイフで十代の心臓をヒトツキしてやった。 「偽りの愛なんていらないんだ」 血の味のする唇にそっとキス。 死んでから今度こそ、俺を愛して。 end
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加