ソウルフラワー

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二人の男が舞台中央にポツンと立っているマイクに向かって勢いよく走っていく、「ハイどーも」二人の威勢のいい声が聞こえる。 二人の登場により会場がどっと沸く、歓声が鳴りやまない、会場のボルテージが一気に上がる。 「めちゃくちゃ盛り上がってるよ」「おい、今は自分達のことだけ考えろよ、この舞台には俺達の人生がかかっているんだ」「分かっているよ猛」舞台裏で二人は緊張の渦にのまれていた。 「どーもありがとうございました」舞台の盛り上がりは尋常じゃない、歓声、拍手が鳴りやまない、笑い声が耐えなかった、会場全体が笑いで包まれた。 会場に老若男女の笑い顔が咲き乱れていた。そるはまるで一面に広がる花のようだった。笑いは世界を平和にするということを象徴するようだ。 二人は舞台袖でスタンバイしていた。 「おい、行くぞ聡」張り詰めた場の雰囲気に圧されている聡に猛は活を入れるように肩を叩いた。 「あ、ああ・・・」途切れそうなくらい情けない声が返ってくる。 「おい、聡しっかりしろ。ここで俺達が認めてもらえばまたあの場所に帰れるんだ、これが最後のチャンスかもしれないんだ・・・」猛も強がりながらも内心はこの場の空気に飲み込まれていた。 「ああ、すまない猛」俺達にはもう後がない、これでだめならもう・・尋常じゃないほどの大きさのプレッシャーという名の塊が二人にのしかかってきた。 「はい、ありがとうございました。いやー凄かったですね、やはり今乗りに乗っているコンビですからね、やはり今年はこの二人が最有力候補と言っても過言ではありませんね、まだ芸歴二年目というのが驚きです」 やけに明るい声が会場から聞こえてくる。 「それでは次のコンビです。このコンビは芸歴十年目なのでラストチャンスですね。最後のチャンスですからね、頑張って欲しいですね。それでは、ソウルフラワーのお二人です。どうぞ!!」 明るい声が消え去って会場は、さっきまでの盛り上がりが嘘だったように静まり返っていた。 猛は静寂のなかで過去に振り返っていた。 俺達がお笑いという道を歩み始めてからもう十年という月日が経った。 これが最後かもしれない、十年前聡と交わした約束が蘇ってきた。
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