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‐一方ほぼ同時刻…‐
異世界セイント・ガーデンの外れに位置する妖精の村‐フリムス‐では、ある出来事が起きていた。
晴れ渡るセイント・ガーデンの空に包まれ、フリムスは穏やかな様相を見せている。
村の中央に悠然とそびえる丘には眉間にしわを寄せ、何か考え事をしている表情の妖精が仰向けに寝ていた。
「ん……?」
妖精は突然表情を濁らせ、むくりと起き上がった。
次の瞬間空は先程の晴れ渡る快晴から一変、まるで今にも嵐が訪れそうな様相を見せた。
雷鳴が轟き地上には風が吹き荒れ、妖精の体は勿論、村の民家はたちまち崩れそうなきしむ音を立てていた。
「なんと珍しい………
お客さんのようじゃ………」
歳老いた妖精が体を起こした、まさにその瞬間、凄まじい雷光と共に耳鳴りがする程の音と衝撃が地上に走る。
先程まで穏やかな雰囲気に包まれていた、村の平穏を突如として崩された。
雷光と共にその物体は妖精が居た丘の真下に、そのスピードを衰える事無く垂直に落下した。
落ちた場所からは多量の黒煙が舞い、独特の死臭を村全体に撒き散らしていた。
歳老いた妖精は身軽な動きで丘からその体を降ろし、地上に足を着かせた。
妖精は鋭い眼光で黒煙の中を見つめた。
「さて………わざわざこんな秘境に訪れたお客に失礼があってはならないのぅ………」
妖精の言葉に反応するように、その物体は黒煙の中から姿を現した。
姿はまるで………この世の終末を思い起こさせ、二メートル以上あるであろうその巨体を一歩、また一歩ずつ動かしていた。
見る者全てを震え上がらせるような瞳は妖精と目を合わせた。
「あんたに用がある………
妖精界に君臨する大妖精………ジルバよ! 」
ジルバはにやりと笑みを浮かべ、眉をつり上げた。
「何者かは知らんが………不気味なオーラをひしひしと感じるぞぃ………
………充分にもてなしてやろうぞ! 」
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