2章

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決して高い身分でもなかったが、それでも彼は『武士の子』であり『武士』であった。 それなりに自負もあれば誇りもある。 徒士とは言えども『武士」。 自分は長男だから、継ぐには困らないがそれでも、勉学も剣術も怠らなかった。 いつか誰かの目にとまることを願って。 徒士なんかで一生を終わらす気はまったくない。      ・・・・ ――いや、なかったのだ。 正確には。 そんな野心さえ、持っていた。 幸いにも、彼の家は代々主君の影武者をつとめるといった重要な役割を持っており、努力次第では充分上を狙える位置にあった。 毎日朝早くから寺子屋で素読をなし、午後は竹刀ないしは木刀を振り続け、帰るのは辺りは真っ暗になってから。 その後家に帰ると次は、弟との打ち合いが待っていた。 二つ下の弟は、いずれ出て行くこととなる。 しっかり鍛えよとのことだった。 そして敦志の1日は終わる。 充実した毎日だった。 .
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