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「わりい、言い過ぎたか?」
急にごろんと横になった敦士を見て、永斗は少し焦る。
元々人の顔色をうかがうタチではないのだが、なんせ事が事だし、もしかしたら言ってはいけない気がしないこともない。
「悪かったって。俺にはよく分かんねーからさ。」
永斗は生まれた時から非人だった。
非人同士が結婚して生まれた子どもも非人。
非人であることを憂いているような暇はなく、むしろ誇りに感じながら生きてきた。
賤民ごときに何の誇りがと、敦士も初めに問うたのだが、永斗自身にもよく分かってはいなかった。
しかし、武士に誇りがあるように、俺にも誇りがあるんだと、胸張って言った永斗を見て、敦士はある程度不安が解消された。
――頑張って生きるって決めたのに。
殺されなかっただけ、ましじゃないか。
生きていればいつか会える。
そう信じて敦志はこの非人小屋まで来たのだ。
――…もう、だめかも……
その夜、敦志は脱走した。
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