3章

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「そんなに死んだ牛が嫌なのか?」 「仏教も神道も、殺傷と血は穢れたものだと……」 「俺ら自身が穢れてんだから良いじゃねーか。」 「……………」 口をつぐんだ敦志に向かって唾を吐きつけると、おもむろに立ち上がる。 「お前、腕はたつのか?」 「?稽古を怠ったことはないよ。」 つい先日、永斗が目を覚ますと外に人影があった。 盗る物もないし、放っておこうかと思ったものの、隣に敦志の姿はなく、はっと起き上がると扉をそろそろと開けて、人影を確認する。 ―――敦志だった。 脇差しさえも許されていない非人の身分で、木の棒を刀に見立てて振っている。 しばらくするとそれを置き、身のこなしを確認していた。 素人目に見ても、強いだろうことは理解できた。 「付いて来いよ。」 「……今度はどこさ?」 「武士のお前にぴったりの仕事、ありそうだから。」 あえて『元』は、つけなかった。 .
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