4章

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「名前は?」 「敦志です」 「ちゃうちゃう、長い方や」 ―――何モンだ? ここで、それを聞かれたことはない。 「名乗る時は自分からお願いします」 「うわ、そう来るか」 ちょこっとおどけた後に、姿勢を正して男は言った。 「―――元谷、昌広や」 名字、だ……… 「壱ノ瀬敦志」 まさかここで、それを口にすることがあるとは思わなかった。 「ま、聞いたとこで、ここじゃ何の意味もないんやけど」 「元谷殿は、何者なんですか?」 「阿呆ォ。ここじゃあ殿なんて誰も使わん。マサや呼びぃ」 ついつい、癖が出る。 そうだよな、うん。 そう一人ごちながら、マサの方を見やった。 「わいは武家のもんやった。まあ、察しとるたあ思うが」 こくりと頷く敦志を見て、彼も一つ頷く。 「お前の場合は何や切羽詰まってこの場所に来とるんや思う。お前がわしを知らんくとも、わしゃお前がここに来た時から知っとる」 とは言えそりゃあ、ほんの数月前のことだがな、と乾いた笑いを浮かべるマサ。 「わしゃ武家の次男やった」 .
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