1章

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「おう、お帰り。今日は何やってきたんか?」 集落のような場所に、一人の少年が入ってくる。 それを見つけた男が、川の水がたっぷり入った桶を両手に持ったまま、声をかけた。 「同心の付き人。三人くらい押さえてきた。」 「良い金になったんじゃないのか?」 「……もらえなかった。」 少年の少し曇った顔に気づき、男は無理にでも笑顔を向ける。 「まあしょうがないな。俺らが稼いでやるから安心しろって。」 「……ごめんなさい。」 「謝るとこ違うだろ。しょうがないんだ、『ひにん』なんだから。」 『ひにん』――…… 『非人』―――……‥ この存在を、一体どのくらいの人々が認めているのだろうか。 ――…時は幕末。 場所は江戸。 これは非人と呼ばれた彼らの、不器用にそして必死に生きた、その記録か―――……‥‥ .
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