1章

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「おーい敦志!帰ったかーっ?」 狭い道の奥の方から顔を覗かせた少年もまた叫んでいる。 その声に気づき、足を止めるのもまた少年。 「帰ったからここにいんだろうよ。」 「金分けろやーっ!」 敦志と呼ばれた少年は、再び表情を曇らせたが、気を取り直してもう一人の少年に言い返す。 「もらえんかった。」 「何だってー?」 「だから、もらえんかったって!」 それっきり黙る二人の少年を見かねた先程の男が割り込んでくる。 「そんな顔すんなって。敦志も永斗もこれからなんだから。」 ほら行け、という風に背中を押された敦志は渋々歩き出す。 永斗の傍まで来た時、ふと振り返って男に一言言ってみる。 「柊之のおっちゃんも頑張ってね。」 「俺はいつでもがっぽがぽよ。」 握りこぶしを見せる柊之に今日初めての笑顔を見せると、そのまま永斗を伴い家屋の中へ入っていった。 .
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