1章

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「何でもらえんかったんだ?」 「非人にやる金はないって。」 「……だよな。」 家屋、というほど大層なものでもないが、とりあえず人が住むのに不自由はしない住処。 敦志がそこの土間に座り込んでいると、奥から永斗が新しい着物を持ってくる。 これまた着物、というほど大層なものでなく、お粗末な布には違いなかったが。 「これしかない?」 「それでも手一杯なんだよ。お前が稼いでこないから。」 「それ言う?オレだってまだ慣れないしさ。」 敦志が身につけているのは、血がこびりついた布。 それをふと見やり、永斗は鼻をつまむ。 「それ、俺洗わねえからな。」 「これ自分で洗えって?」 「当たり前だろ。てかなんで毎回そんなに汚してくんだよ。」 「そんなの、あの同心が下手くそなんだろ!」 同心、とは当番同心の事であり、死罪となった者の首を打つ役のものであり、非人である彼はその罪人を押さえておくのも仕事の一つであった。 ムキになって言い返す敦志に向かって、口笛と一緒にぽつりと言葉を投げつける。 「さすが武士は違うねえ。」 「……………。」 齢のほどは15辺りか。 同じ家に住み、同じ身分でありながらも。 同じように士農工商から外れた、賤民であっても。 彼らの境遇はまったく違うものであった。 .
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