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「おーい、永ちゃんこっちーっ!」
「おー、今行く!」
ちゃっかり荷物の半分を持たせた永斗と、ちゃっかり荷物の半分を持たされた敦志が河原に辿り着くと同時に、川の回りに雑然といた女性達が一斉に振り向く。
辺り一面に転がされている動物の死体の腐敗臭だけが漂っていた。
「うっ……」
「つままないつままない。こんなの序の口だぜ?」
自身の鼻に伸びた手を永斗に押さえられ、敦志はとっさに息を止める。
そしてそのまま目を逸らす。
「逸らすなよ、これが俺らの仕事だ。」
罪人を押さえつけるだなんて、そんな甘っちょろい仕事だけだと思うな。
そんな事を呟きながら、斗は袖をまくり、女性達の方へ駆けて行く。
「今日は新入り連れてきた。」
「また可愛いのが増えたねえ。」
腰の曲がった老婆でさえも、片手に杖を、片手に鎌を持ち、牛の死体の傍に立っている。
「茂田のばあちゃんよ、非人に可愛いはないだろう。」
「わしにしたらみんな可愛えよ。」
高らかに笑いながら、牛に鎌を入れる。
吐き気を装しながら、敦志はそれを見ていた。
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