体育祭

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そんな感じで、『愛』について思考を巡らして、キリスト教が教える愛から、古代中国の思想家『孔子』が伝えた『仁義』にまで考えが及ぶと、準備が終わったようでMハゲが終了を伝えに来て、俺たちは教室に戻った。 その後は翌日の体育祭本番の日程の確認と、お疲れ様明日は皆で力を合わせて優勝しよう。と、息巻くMハゲの応援を聞いて、下校になった。 ―― 校門を少し出たところでみよりと待ち合わせをして帰るのが今では定着したが、今日はたまたま下駄箱の段階で彼女と遭遇した。 よ! 偶然だな。そうだね! じゃ、ま、帰るか? うん! そう言ってお互い軽く挨拶してからみよりを横に歩きだす。 「秋人君はなんの種目に出るのー?」 「百足競争」 「え? 校庭の隅でやる地味なやつ?」 「地味でも誰かがやらないといけないものなんだよ。組み立て体操の人間タワーだって一番上で目立つやつが居る下には支えてる人が居るじゃないか。お前は地味だからって彼らを見てやらないのか?」 「そんなことないよ! 下の人が支えてるから上の人が立てるんだし! でも、秋人君。秋人君って、運動……苦手じゃないよね?」 そう言ってみよりは俺の目を見つめてくる。 そして、柔和に微笑んで、 「楽……だからでしょ?」 と訊いて来た。 「まぁな。運動会なんてものは、昔からあんまり好きくないんだよ」 「もう、めんどくさがりだな~。子ぶたになっちゃうよ?」 「せめて大豚になるよう努力するよ。お前の料理食べてたら余裕だ」 「えへへ、美味しいからね~。愛情が篭ってるからね~」 はにかみながら肘でわき腹を突いてくるみより。 ――俺がみよりと付き合いだしてからと言うもの、みよりさんは俺の家に晩飯を作りにきてくれる。甲斐甲斐しい彼女を持つ男は幸せだと昔から言われてるが、まさに! 今日も作りに来てくれるんだろう、会話を楽しみながらスーパーに立ち寄ってそこそこに買って、俺の家に付いてくる。 これも定着した。 うん、なんとなく半同棲生活なんて言葉がピッタリ合うと思うね―― ただいまー。と玄関を開けると、みよりもただいまー。と言って入ってくる。 それから二人で会話したり遊んだりして、夜飯時になって、みよりが家の小さな台所の前に立つ。
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