体育祭

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「今時ブルマなんかどこの学校でもねーよ! あんなパンチラガードのフェチ野郎だったとは……三回死んで二回生き返れよ」 「わかってない。わかってなさ過ぎるぜ秋人! 想像してみろよ? 学校中の可愛い女子が太ももをあらわに跳躍し、走駆し、生き生きと躍動するその姿を……ああ、瞼に浮かぶぜ。ブルマ乱れ咲きだ」 水近の言葉に軽く頭を抑えたくなったが、その前に水近の頭を叩いておく。 スパコーン。と、我ながら綺麗に平手打ちが入ったのを確認して、 「そんなにウイリーパンツが好きなら柏咲にでも履いてもらえ。んな事より、作業を続けろよ。お前さっきから手が動いてねーんだよ」 水近に言い浴びせる。水近は、「ウイリーパンツとブルマは違う――」と語りだしたが無視して俺は作業を続けることにする。 それは椅子運び。明日に迫った体育祭の準備と言うことだ。 俺と水近をはじめ、一組の男子は揃って体育祭の本部の建設に従事していた。 テント張ったり、机だしたり、椅子並べたりだ。 他のクラスも似たような事をしていて、残暑厳しいこの時間帯……どいつもこいつも凄い発汗量だ。 かく言う俺もご多分に漏れずさっきから汗で張り付く体操服が不快で不快で仕方がない。 ふと水近に目をやると、他の男子とブルマについて盛り上がっていた。 「ブルマーか……」 何となく呟いて、 「みよりなら似合うかな?」 と、ちょっとだけ頭の中で想像してみる。 ……………… ………… ……。 ちょっと……見たいかも。 ――いや、変な意味じゃなくてだよ! そうじゃなくて、愛しい恋人の姿ならどんなものでも見たいというか…… そう! 愛だよ愛! 愛しい彼女を色々と着せ替えてみたいと思う、若干エロスよりな自分本位な気持ちではあるが、アガペーなんて無償の慈悲のようなものに比べれば、幾分も歳相応の純粋な気持ちだろう。インモラルだがな。 しかし怖いな、みよりにお願いしたら本当に履いてくれそうだ。 あいつの俺に対する気持ちこそアガペーの持つ、『見返りを求めない愛』かも知れない。いや、ストルゲーの、『従う愛』かも知れないな。
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