小林

2/3
前へ
/71ページ
次へ
小学生の感受性とはまことに豊かなもので。 毎日の何気ない風景の全てがもう、とてつもないドキワクな冒険の世界に繋がっていた。   皆さんお察しの通り、私は少年の心をもった美少女だったので、そこいらの女子がやるような生温いお遊戯ごとに快楽を見いだせなかった。   横断歩道の白が陸で黒がマグマねー!! ってひとりで設定つくって白だけぴょんぴょん跳ねて着地して歩数あわなくて黒に足入っちゃって、 「ぎゃー!!一機死んだ!!!」 とか叫んでた。そんなガキ。   でもこれやってて何回か車に引かれそうになり、命の危機を感じ始めたから応用編として小学校の玄関のタイルでやることにした。 登校時は遅刻ギリギリなのでスルー。   戦いは下校時に始まる。   私の通っていた小学校の玄関は白とどす黒い赤色のタイルでマス目状に構成されていた。 どす黒い赤…まさに俺が夢にまで描いていたキングオブマグマ!!!   スニーカーに履き替え、白をぴょんぴょんとジャンプして外へ向かう。   しかし、私の計画は早くも崩れさった。あろうことか、外へでるちょうどあと一歩前のタイルからすべて赤のタイルに変わっていたのだ。   きっと数が足りなかったんだろうな。 デザインだとしたらまじセンスレス。まじファック。   てめ、校長!!! ちゃんと確認して発注しやがれ!!!   ともかくこの先をどうのりきるか… このままでは家に帰る事はおろか、マグマに住みつくという幻の火の竜、ファイヤードラゴンの餌食になるのは時間の問題!!! (そうゆう設定)   私はありとあらゆる知恵を絞った。 ジャンプではギリギリ届かない。 落ちたら焼け死ぬかドラゴンに食われ…。   だが賢い私は思いついた。   「てかコレ、ドア飛び移ればいんじゃねwwwうはwww俺ギガかしこスwww」   私はわざわざフロアの端まで行き、イスを補助にしてドアに飛び移った。   ガラス製のドアは下に足がかけられる程度の縁があったが、インドア少女の私は早くもバテた。   「くそ!!もう少しで出口だ!! いけ!!伝説の勇者はるか!!」   そう心の中で叫び、ドアからドアへ移動。 開いてるドアまで必死でしがみつき移動。   端から見たらもう謎のガキがドアにしがみついてうごめいてるだけ。   あともう少し!! ドア半分で出口!! 俺はよくやった!!! この洞窟を突破したのはこの学園でただひとり…真の勇者はこの俺だ!!!   その時同じクラスの小林(♂)が現れた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加