暗転、そして急転

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      しかしそれほどのリスクがあると解っていても、龍野は母を裏切るという行為を腹の底から渇望していた。       今までずっと従ってきた人物を裏切る背徳感と、生まれ落ちて初めて持ったような気さえする自我というもの。     最早龍野の頭に並べ立てられたリスクは、なんのストッパーにもならない。     母親を傷つけたくて堪らなかった。       今まで押さえつけられていた分、その圧力が緩んだ反応は龍野さえ自制できないほど大きなものだったのだ。   龍野はもう一度自分が先程間抜けを晒した香水売り場を睨む。   ここからでは大きな棚に隠れて良く見えないが、少し影が動いているのが分かる。   先程の店員だろうか。   香水を盗るには、あの店員は絶対に邪魔だ。       どうしたものか。    
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