暗転、そして急転

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      入試と同じくらい真剣に考える。 だが強制される勉強よりも、随分激しい高揚があった。 体の芯を揺さぶりつける激情に反して心は計画に集中し始め、その差が心地よい。     その時、バサバサと鳥の羽ばたきにも似た音がした。       体中に巡らせていた思考回路がぷつりと遮断され、驚いた龍野は音の方を振り返る。     三十代後半くらいのショートカットの女性が泣き出しそうな顔で本の散らばった床を見つめていた。    どうやら、積み重なっていた本を崩してしまったようだ。       人影が動いた。       今まで、棚に隠れていた男だった。 有能そうな顔に営業スマイルを浮かべ、女性の元に駆け寄っていく。「すいません」「大丈夫ですよ」という穏やかな会話が聞こえた。       思わぬチャンスに龍野の喉が震えた。    
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