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香水売り場から本が崩れ落ちた場所まで、結構な距離がある。
今、間違い無くチャンスが目の前に横たわっている。
しかし、そんな龍野の期待を打ち破るようなタイミングで、また別の人影が現れた。
五十代半ば頃の、顔に深い皺を刻んだ男。先程の店員とは違い、恐ろしくエプロンが似合っていない。
窪んだ瞳は落ち着きなく動いていて、口元には笑みが浮いている。
だがそれは一発で社交辞令だと見抜けるような笑みだった。
表情から考えていることが察せない男、というのが彼の第一印象だった。
その男は、実に自然な動きで先程まで無人だった香水の場所についた。
何故そこにつく、と龍野は眉を強く寄せた。
値段が高いからだろうか、香水の側には人がつくようにしているらしいと察して勝手に出そうになる溜め息を押し殺した。
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