暗転、そして急転

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      香水の場所はガラ空きだ。 足早に売り場に近付いた。心臓が早鐘のように音を立てる。    息苦しいが……なんだろうか、この体中の血が沸騰するかのような興奮は。       心臓の音で店員に感づかれるのではないかと思うくらい、龍野は気持ちを高揚させていた。     香水売り場についた。 何も考えずただ思うがまま、目の前にある箱を手に取る。 この中にあのとんでもない金額の香水が入っているのかと思うと、倒れてしまいそうだった。       そっとポケットに押し込み、足早にその場を離れた。       頬が緩みそうになるのを必死におさえつける。 太ももにある固い感触は、自分が生まれて初めて世間に逆らった勲章なのだ。      
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