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「何でしょう?」
訝しげな店員に、男は困ったように眉尻を下げた。
「そんなに怪しまないでくださいよ。あの、俺ずっと見てたんですけど、万引きしたんですよね? その子」
躊躇いなく吐き出された言葉に龍野の体は強張った。
見られていた。
自分が初めて社会に背いた高揚に酔っていた姿を。
誰にも知られず事を成したと信じきっていた自分を。
顔から血の気が失せ、頭がグラグラする。
今なら舌でも噛み切れると泣きそうになりながら龍野はうつむいた。
それに同情したわけでは決してないだろうが、店員の返事はどこか厳しさを感じさせる口調だった。
「……見てたんですか、この子が万引きするところを」
「えぇ」
「なのに止めなかったんですか」
「えぇ」
「どうして」
「言って止めるよりやらせて後悔させた方が効くでしょ?」
男は当たり前のように言う。今にも、どこが間違ってるの? と言い出しそうな顔で。
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