暗転、そして急転

25/51
前へ
/880ページ
次へ
    男と根本的に考え方が相容れないことに気づいたらしい店員は、嘆息する。       「……それで、結局なんの用なんですか」        面倒そうに言った。男は相変わらず人好きのする笑みを崩さない。       「俺も今からそこの少年の説教につきあいますよ」   「はぁ? ふざけるのもいい加減にしてもらえませんか? あなたの口出しする問題じゃないんです」       ついに店員は強く眉根を寄せ、苛々した様子で吐き捨てる。   それ程男の提案には突拍子が無かった。  しかし男は余裕の表情を一切歪めない。 むしろますますおかしそうに、悪戯好きの子供の顔でポケットに手を突っ込んでいる。       「いやぁ、でも俺ねぇ」   「なんですか、気持ち悪い。俺達もう行きますよ」   「そういうわけにもいかないんですよね。俺って非常に優秀な公務員なんで」       男の言葉を無視してその場を離れようとした店員が、足をとめた。      
/880ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2822人が本棚に入れています
本棚に追加