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四月、栄禄(えいろく)男子高、正門にて。
新品のまだ生地の固い制服を着た、まだ幼い顔の新入生。
俺…天白 千種(あましろ ちぐさ)は後輩たちの顔を見ていた。
美人が多いな、と、思った。
けれど俺は美人を見慣れているので特に驚きはしなかった。
「千種。入学式が始まる、行くぞ。」
その理由その一が俺に話しかけてきた。
愛西 悠(あいにし ゆう)
整った顔立ち、生徒会長、黒髪眼鏡。
絵に描いたような優等生。
そんでもって俺の親友。
そいつが口を開いた。
「新入生代表、お前がよく知ってるやつだよ、楽しみだな。」
「俺の知り合い?誰だよ。」
「すぐわかるさ。楽しみだ、俺が。」
「お前がかよっ」
俺の知り合い?
そんなことありえないに近い。
俺にはあまり後輩がいないし、ここは地元から遠い。俺は寮に住んでいる。幼なじみな悠もそれは一緒だった。
それを誰よりもわかってる悠の思わせぶりな台詞に違和感を覚えつつも、俺は入学式へ向かう足を急がせた。
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