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慧は走っていった。
タクシーに乗って、
病院へ向かていった。
俺は嫌な予感がした。
それは案の定現実となった。
慧のお父さんと、お姉さんが亡くなった。
交通事故だ。
お父さんがお姉さんを高校まで送る短い間の事故だった。
即死だったと聞いた。
俺と兄貴はお姉さん…澪(れい)さんと面識があった。
慧の家に行った時に会ったのだ。
会う度に人なつっこい笑顔を向けてくれる人だった。
慧とよく似た、優しい人だった。
お通夜、お葬式ともに俺たちは参列した。
写真の中の二人はやはり人なつっこい、優しい笑顔だった。
参列者はみんな泣いていた。
それほど彼女らの人望が厚かったことがわかった。
お通夜、お葬式の慧は、
涙なんか見せなかった。
全てをかみ殺し、
泣き崩れるお母さんの傍にいた。
慧はきっとお母さんを支えなきゃ、と思っていたんだと思う。
お母さんには慧しかいないから、
ひたすら、支えなきゃと思っていたんだろう。
それを見て俺は、
お母さんを支える慧を支えたいと思った。
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