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あれから二週間がたった。
試合が終わったその日に、
慧はサッカーをやめた。
先生や部活のメンバーに止められたが、
それでも慧は続けなかった。
「だめなんだ。
父さんも姉さんもサッカー大好きだったから、
続けるのはつらい。
…それに母さんが、
ボール見る度泣くんだよ。
俺、サッカーできない。
ごめん…。」
慧はやめる挨拶で、半泣きでそう言った。
好きだったからやめた。
痛いほどその気持ちは伝わってきた。
遂に泣いた慧を兄貴が抱き締めた。
みんなもつられて泣いていた。
…俺は泣かなかった。
泣いたらだめな気がした。
泣いたら、
慧をとめてしまっただろうから。
「慧、」
俺も慧を抱き締めた。
寧ろ泣きついた。
宥めるように頭を撫でられた。
その手の優しさは澪さんと一緒だった。
俺はまだ未熟だった。
まだまだ子供だった。
支えられる強さがなかった。
「慧…っ」
まだ、告白できなかった。
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