運命

9/13
前へ
/40ページ
次へ
あれから二週間がたった。 試合が終わったその日に、 慧はサッカーをやめた。 先生や部活のメンバーに止められたが、 それでも慧は続けなかった。 「だめなんだ。 父さんも姉さんもサッカー大好きだったから、 続けるのはつらい。 …それに母さんが、 ボール見る度泣くんだよ。 俺、サッカーできない。 ごめん…。」 慧はやめる挨拶で、半泣きでそう言った。 好きだったからやめた。 痛いほどその気持ちは伝わってきた。 遂に泣いた慧を兄貴が抱き締めた。 みんなもつられて泣いていた。 …俺は泣かなかった。 泣いたらだめな気がした。 泣いたら、 慧をとめてしまっただろうから。 「慧、」 俺も慧を抱き締めた。 寧ろ泣きついた。 宥めるように頭を撫でられた。 その手の優しさは澪さんと一緒だった。 俺はまだ未熟だった。 まだまだ子供だった。 支えられる強さがなかった。 「慧…っ」 まだ、告白できなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加