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呼び止めた時慧はひとりだった。
体育倉庫の前にいた。
足元にはおそらくしまい忘れたであろう薄汚れたサッカーボールが一つ落ちていた。
「隼人、」
小さく俺を見て呟くと慧は足元にあるボールを拾い上げた。
「…慧。」
酷く喉が乾いていた。
乾きすぎて寧ろ痛みが生じていた。
酸素を求めては口を開いては閉じた。
鼓動に目眩がした。
「すきだよ…慧。」
俺の声はきっと小さかった。
聞こえていることを祈った。
「慧はひとりにならないから。」
「俺は慧をみてるから。」
「大好きだ、慧。」
まだ肌寒いはずなのに頬が熱かった。
俺は恥ずかしくてますます赤くなっていた。
「…知ってるよ。」
慧は優しくほほえんで俺の頭を撫でた。
さらにますます、俺は赤くなった。
「本気だからな。」
「うん。」
「本当だから。」
「うん。」
「すきだよ。」
「知ってるよ。」
何度も確認した。
何度も、何度も。
「すきだ。」
「わかってる。」
慧はほほえんでいた。
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