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そして5分以上経っただろうか…
私は忍び足で背を向けている結菜に近付き、その絵を覗いてみた。
黒く…なってない…。
やはり、あの時は失敗したのか、たまたま虫の居所が悪かったのか…う~む。
背後の私に気付いたのか、振り向いた結菜が言う。
「できたよ♪」
「どれどれ?ホントだ!可愛く描けたねー♪」
結菜の絵の顔は、口をニッコリと開けて笑っている。
私は当然心療医であるわけなく、四六時中結菜を見ているわけでもなく…そして何より、結菜の心をいたずらにかき乱してしまいそうで、素人が下手に結菜を試すような事をしてもいいものなのか迷った。
でも『何かあるなら救ってあげたい』…おこがましい話だが、この時の私はその気持ちばかりが先行してしまった。
何もなければそれでいい。それが1番いい。
だけどもし、母親にさえわからぬ何かがあるのなら…
「次は何を描いてほしい?」
そう笑顔で私に問う結菜に私は…
「じゃあ次は、結菜のママと結菜…描けるかな?」
この前と同じものを描かせようとした。
結菜は笑って「いいよ♪」と答え、新しい紙を用意して描きはじめた。
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