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結菜は描いた絵の…
自分の顔の部分だけを、真っ黒に塗りつぶしていたのだ。
隙間もないほど黒く、黒く、深い闇の如く黒く。
私も一瞬戸惑ったが「はいはい、静かにー」と他の子供達を制し、結菜の横にしゃがみ込んで聞いてみた。
「どうしたのかな?間違えちゃった?」
結菜は自分の描いた自分の黒い顔を見つめたまま、答えもせず、頷きもせぬままにいた。
どうしたものか。
「もう一度描き直す?」
結菜はまた微動だにせず、黒い自分の顔を見つめている。泣いてはいない。
他の子も結菜を気にしたのか「どうしたの?」「結菜ちゃん大丈夫?」と声をかける。
すると突然、結菜はその絵を持って立ち上がり、みんながいる部屋とは別の、奥の寝る部屋の隅へ行き、小さくしゃがんで…ただ絵だけを見つめている。
やはり泣いている様子はない。
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