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……誰も言葉を発しない。
いつの間にか集まっていた喧嘩好きの野次馬も、不安げな顔をしていたチトセも、緋鬼の操る傀儡をみていた。
見たものが魅了される戦い。
まるで緋鬼自身も舞っているかのようで。朱色の服に朱色の刺青、少し黒みを帯びた赤い瞳は、人々の目を奪う。男らも真剣な表情で剣を振り回していた。
糸を強く引くと、片手の短剣で肩を斬る。
斬られた男は、顔を歪ませつつも大棒を傀儡へと振り落とす。
小指と薬指に糸を絡めて横に腕を引けば、傀儡は素早く避け、別の男へと向かった。
カキン、と金属が擦れた音と、肉の斬れる鈍い音、そして痛々しい叫び声が響く。
一人、また一人と男たちは倒れる。
誰も、意識が無いか、大量に出血している。
ザクッ
最後の一人が倒れた時、意識のある男たちは恐怖に怯えた目で緋鬼を見上げた。
「すみませんでした………俺達の負けだ……許してくれ…」
今までが嘘のように男たちの一人が掠れた声で懇願していた。
緋鬼は緑を肩にのせるように抱くと、男たちへと近づく。
それと同時に野次馬がうるさくなってきた。
『兄ちゃん強いな!』
『その人形見せてくれよ!』
チトセも目を輝かせて緋鬼に近づく。
「緋鬼!」
しかし緋鬼はチトセに目をくれない。
「おい。」
何も写さない深い赤い目が、地面に倒れた男に言う。
「命は助けて下さい…」
「自分から仕掛けておいてか?
死ぬ覚悟があったから絡んできたんだろ。まぁその出血じゃどちらにせよ危ねぇがな…」
「死ぬか?身の程知らず…。」
そう言って緑の短剣を手にした。
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