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「仕方ねぇな…」
緑、と言おうとしたとき、
「おい!こっちだ!」
声のした方を見ると、右手にあった建物から男が手招きしている。
「父さん!」
チトセが走り寄る。どうやらチトセの父親か。それなら、と思って後を追った。
タンッ タンッ タンッ…
靴の音が反響する。
「お前、目をつけられたんだ。」
前を走っているチトセの父親が突然話し出した。
「今街で噂になってる。人形で戦う子供がいると。しかも強いってな。」
ちらっと俺を見た。
「気付かなかったかもしれないが、お前が倒したのはそこそこ名の知れてる用心棒たちだったんだぜ。
驚いたよ。結構な要人の護衛してた奴等が一瞬で倒された、と聞いたと思ったら、息子が一緒にいたってんだからな!」
ハハハ!と楽しげに笑うチトセの父は、明るくて快活な人間だった。チトセの爽やかさはここから来てるのかも知れない。
「父さん、笑ってる場合じゃねぇよ。緋鬼は上のやつらに目ぇ付けられたんだろ?」
「狙いが俺なら、一人で逃げる。お前らに迷惑かけるつもりはない。」
俺がそう言うと、チトセは不機嫌そうな顔をし、父親はニカッと笑って言った。
「「乗りかかった舟だろ!」」
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