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「ちょうどいい。聞きたいことがあるんだが…。」
「なんだ?」
「この街に【黒羽】という刀があるだろ。どこにあるか知らないか?」
そう訊ねると、チグマは一瞬、はっとしたように俺を見て、考えるように言った。
「黒羽……か…。知らないな。大分前に持ってかれた。
あぁ、実を言うとその刀は俺が作ったんだ。」
「父さんが?」
チトセが大袈裟なくらい驚いて父親を見た。
「チトセには言ってなかったな。」
チグマははにかむように笑うと、俺には見えない位置にある窓の外を見る。
「あんたが作ったのか…。」
【黒羽】
見るものを引きずり込むような漆黒の刀身をした刀で、その刀を持てば一騎当千、獣や人の肉骨はもちろん、木くらい太い鉄さえも両断すると言われる。あまりの威力、美しさのために、今じゃ妖刀とも言われている。
「あれは俺が病的なほどの執念で作ったものだ…。」
「チトセ。緋鬼は今日泊まるから、なんか買ってこい。」
「ちょっと待」
「ほんと?!じゃ、行ってくるぜ!」
待てよ、と言いかけたが、チトセの嬉しそうな返事に掻き消されてしまった。
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