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「まだ子供なのに不運だったな。」
「気にするなよ。」
ちら、とサツキの後ろを見る。
先程座っていた椅子の脇には、真っ黒な刀が置いてあった。
あれが黒羽だな……。
くく…と笑みを漏らしそうになる。
「君は高く売れそうだ。」
サツキもまた、俺を見てにやりと笑った。
「来い。」
サツキは椅子まで行って黒羽を手にとる。
噂どおりの美しい刀身。闇を纏ったかのような、まさに妖刀という言い知れぬ力を感じた。
「押さえてろ。」
先程の大柄の男たちが、俺の腕を掴み、頭を押さえつける。
「何をする気だ?」
知ってる癖に、俺は尋ねた。
「脳を壊す。
大丈夫だ。少し痛いが。」
何が大丈夫だ。
それ以上説明する気はないのか、サツキは刀を振り上げた―――
「緑、行け」
瞬間、目の前には茶髪の少年が立つ。
緑はサツキの腕へ短剣を振り下ろすが、サツキはスッと引き、刀を構えた。
「指だ!そいつの指を押さえろ!」
黙っていたグラサンが、後ろから怒鳴る。
慌て両脇の男らが手首を掴んできたが、立ち上がりざまに思い切り腕を振り上げて、倒れさせた。
間髪いれずに、左手の指に絡めていた糸を離し、右手の小指と薬指、中指で糸を絡めると、サツキのすぐ隣に緑を移動させる。
緑は小柄な為、自分の傀儡の中では最も速く動かせる。
「貰ったぜ!」
緑の短剣がサツキの腕を突き刺す。
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