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くそ………
この祭りのような騒ぎ、賞金。戦の街に集まるような奴等が好むシチュエーションだ。
「街の者全員が敵だな…」
「あぁ…俺たちもまずいなこりゃ。」
チグマが呟く。
下手したら俺がこいつらに裏切られて売られるかも知れない。
俺は気を引き締める。
「緋鬼、街の外まで何秒で行ける?」
チトセが聞いてきた。
「この距離なら、20秒か。」
「遅い。15秒で行け。」
チグマが横から入ってきた。
「うるせぇな…。」
「オレと父さんでなんとかするから、絶対に逃げろよ。」
チトセはそう言うと、真剣な顔で表の通りを見た。
ここから街の外への門まで約300m。
街唯一の門だ…パッと見るだけで三人じゃ到底無理な程の人数がいる。
「あの中を二人じゃ無理だろ。」
「嘗めんなよ、緋鬼。チトセはこれでも小さい時から刀握ってる。俺も昔は歴戦の強者だったんだぜ!年取って職人になったが、腕はそうそう鈍ってないさ。」
チグマが誇らしげに笑った。
親子でよく似てることだ。
「じゃあ、行くぞ。」
チグマが俺の腕を掴んだ。
?!
「おい…」
チグマは笑顔で俺を見る。
「お前のお陰で、あの時千鶴に会うチャンスを棒にふっちまったよ。」
「母さんに会えそうだったのにな。」
チトセも俺の腕を掴む。
「「じゃ、走れー!!!」」
思い切り表通りに押し出された。
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