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『無駄だ』
サツキの声だ。
目の前にずらっと並んだ人の真ん中に立ち、こちらを見つめる。俺は3m程手前で立ち止まり、向かいあった。
「どうしてそこまでして俺を狙う?」
別に俺じゃなくてもたくさん強いやつはいるだろう。
「そうだな…1つは、まずお前は珍しい武器を使う。そのプレミア。
二つ目は、どうみてもただのガキだから。特別鍛えたりしてなさそうだ。戦地でそんなのが兵だとは思わないだろ?
そして三つ目…
人形の街に売れば、比にならない程高いだろうな…」
ぜってぇ捕まらねぇ!!!
心に誓った。
「完全に商品かよ。てめぇにとって人間は皆商品か?哀れな奴だぜ」
吐き捨てるように言う。
「あぁ。俺にとって、人間は皆商品だ。弱い人間は一銭にもならない…価値がない…。
だがこの世界で、人の価値なんて考えてる街なんて一つもないんだよ。
これは俺からの敬意の証だ、緋鬼くん。人形の街から指名手配が来てるよ。何をしたか知らないが、いづれ捕まる。なら今でも変わらないだろ?」
「あいにくだが、俺は何にも捕まりはしねぇよ。
俺にとって生きるってのは、考えることだ。弱かろうが、頭が働いているうちは、自分の思考があるうちは生きてる。
だからてめぇなんかに頭壊されて死んでたまるか!!」
言い終わるか終わらないかの間にサツキに斬りかかった。突然なことに周囲は一瞬たじろいでいる。
カキィンッ!!
刀と銃が反発する音が鳴った。
サツキは刺されなかった方の手で銃を持っているのだが、前に刺された腕が利き腕だったようで、かなり不利だ。
周りの奴等の反応が遅れているうちに俺はすぐにサツキの脇をすり抜けると、一気に門前のやつらを凪ぎ払った。
一瞬遅れてみな倒れる。
パァン!パァン!パァン!
無数の銃声が響き始めた。
体のすぐ脇を過ぎていく。走っているためか中々当たらなかった。
「緋鬼!元気でな!」
「どこかで会おうな!」
チトセとチグマの声が聞こえた。
俺は振り返って叫ぶ。
「なんのことだ?お前ら運が悪かったな。俺の操り人形、御苦労さん。」
借りっぱなしは嫌なんだ。
チグマの笑顔と、チトセの泣きそうな、困ったような、よく分からない笑顔を見て、
俺は境界線を越えた。
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