×戦の街×

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「殺されずにすんだな!」 「助かったな。」 「うん。」 緋鬼が無事に逃げて、戦の街は大混乱だった。 だが緋鬼が俺達を操って共謀させた、ということになり、俺達は殺されずにすんだ。 前と同じ生活に戻ったが、なんだか、体が浮いたような感覚に時々陥る。 ふと、窓の外を見た。 喧嘩というより、ただ一方的に相手を殴るリンチが目にはいる。 いつもなら助けに行くが、今日はそんな気分ではなかった。 もっと、なにかある気がする。 「父さんっ!!」 「どうした」 チトセが叫ぶような声で呼んできた。驚いた表情で俺を見る。 手には小さな紙と金が乗っている。 「これ、あの裏に置いてあった。」 指差した先には、千鶴と、まだ赤ん坊のチトセと撮った写真。 なんだ?と思い、渡された紙を読む。 『黒羽、確かに買った。 足りないとか言うなよ。あ、チグマの事だからな、要らないとも言うなよ。 これは領収書だ。 匿ってくれた分チャラな。』 緋鬼、名前くらい書けよ。 「あっはっはっはっは!!!」 「父さん、なんで笑うんだよ…」 まったく、別に要らねーのに。 逆にこっちが借りたみたいで落ち着かねぇよ。しかもこの金、普通に黒羽以上の代金だろ。 「緋鬼のどこにこんな金が。」 俺達は首を捻り互いを見ると、思い切り笑いだした。 「本当に何をやってんだろ!」 「働いているところ想像出来ねぇ!!」 チトセと散々予想を並べて笑うと、不意に思い立ったことをチトセへ言おうと向く。 「チトセ。父さん考えたんだが、旅に出ないか?」 チトセの目が大きくなる。驚いた表情を浮かべたあと、にっこりと満面の笑みを浮かべた。 「うん!良いぜ!」 お前ならそう言うと思った。 微笑んで、頭を撫でる。 嫌いではない。でもこんな街に、一生いてもな、と思ったんだ。 いや、緋鬼。 旅の途中でお前にまた会えたら、とも思うんだ。 そしたら…この金を叩き返してやる!それで、もっと話をしたい。 「さて、準備するぞチトセ。」 「だな!」 †††
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