8人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
『人間は要りませんか?』
まだ街に入ってから200mほどしか歩いてねぇのに、これで16回目だ。多分。
「要らねぇ。」
これもまた16回目の返事。
いい加減嫌になった。
何なんだこの街は。
煉瓦作りの立派な家が並ぶ道は、洒落た街灯に石畳の、綺麗な街だ。どっかの街のように死体などは見当たらない。
夕刻も近くなり、街灯には灯りが点り始めた。
とても静かな街だ。
『人は要りませんか?』
またかよ。
俺はいい加減イラついて、相手の顔も見ずにぶっきらぼうに答えた。
「うるせぇな。要らねぇっての。」
「ちょっと!そんな言い方ないでしょ!」
「は?」
突然怒鳴られ、反射的に声を出す。立っていたのは俺と同じくらいの歳のツインテールの女だった。
「だーかーら!何よその言い方!!こっちが優しく声かけてんのにっ」
なんだこいつ。
「売る側が下手に出るのは当然だろ。」
「うっ…まぁそうだけど…でもあんた変よ!!
この街に来る人は、人を買いに来る人だけよ。なのにさっきからあんた、買う気ゼロじゃない。他の売人も不思議がってるわよ。」
腕を組んで、説教じみた声で女は言ってくる。
うるさいやつだ。
「そうか。興味ない。」
最初のコメントを投稿しよう!