×人間の街×

2/24
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
『人間は要りませんか?』 まだ街に入ってから200mほどしか歩いてねぇのに、これで16回目だ。多分。 「要らねぇ。」 これもまた16回目の返事。 いい加減嫌になった。 何なんだこの街は。 煉瓦作りの立派な家が並ぶ道は、洒落た街灯に石畳の、綺麗な街だ。どっかの街のように死体などは見当たらない。 夕刻も近くなり、街灯には灯りが点り始めた。 とても静かな街だ。 『人は要りませんか?』 またかよ。 俺はいい加減イラついて、相手の顔も見ずにぶっきらぼうに答えた。 「うるせぇな。要らねぇっての。」 「ちょっと!そんな言い方ないでしょ!」 「は?」 突然怒鳴られ、反射的に声を出す。立っていたのは俺と同じくらいの歳のツインテールの女だった。 「だーかーら!何よその言い方!!こっちが優しく声かけてんのにっ」 なんだこいつ。 「売る側が下手に出るのは当然だろ。」 「うっ…まぁそうだけど…でもあんた変よ!! この街に来る人は、人を買いに来る人だけよ。なのにさっきからあんた、買う気ゼロじゃない。他の売人も不思議がってるわよ。」 腕を組んで、説教じみた声で女は言ってくる。 うるさいやつだ。 「そうか。興味ない。」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!