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「別に、旅に目的はない。」
俺は少し眠くなって、気のなく答えるがルリアは俺をまだ寝かす気はないらしく、こちらをじっと見つめていた。
「じゃあ、あんたお金は?目的がないって、そうそう出来ないわよ。」
どうやらまだ疑われているようだ。
「俺は旅芸人だ。とりあえずなんでも出来るから、結構金はある。」
「え!意外。」
ルリアは目を丸くしてこちらを見ると、眠くなったのか小さく欠伸した。さっきの大人びた雰囲気は消え、少し幼い印象を残す。
「俺も眠い。寝る。」
緋鬼は立ち上がると、それぞれ自由な方向へ向いて眠る子供達の間を歩く。部屋の隅でかろうじて無事な布団を見つけると、あくびをしながら入った。
しばらく野宿が続いていたせいか、心地好い睡魔が襲う。
時々背中を蹴られ、後で殺す、などと考えていた頭も次第に何も考えられなくなり、緋鬼は完全に眠りについた。
夜も更けてきた月明かりの中、ルリアは一人目を覚ます。
熟睡する子供たちと、隣で背を向けて眠る緋鬼を見てふと微笑むと、一番端で寝る少年を抱えて外に出た――――
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