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「親はいないって言ってただろうが」
初めて会った時のように腕を掴まれ、引きずられるようにして来た道を戻らされていた。前を向くルリアを睨み付ける。
「正確には親代わりよ。驚いた?」
悪気なく、あははと笑って言うルリアにイラッとする。
俺の視線に気付いたのか、ルリアは少し申し訳なさそうに眉を上げたが、解放してくれる気はないようだ。
「誰だろうが嫌だ。放せ。」
「まぁまぁ、目的なんかないって言ってたじゃない。」
「人の都合を考えろ。」
「人の都合を考えてたら私達の商売は成り立たないわ。」
何言っても駄目だなこりゃ。
仕方ない、強行だ。
強く掴まれ引かれている腕をルリアごと思いきり引っ張り、ルリアの体がぐらっと傾いた所を足ではらった。
派手に転んだルリアエから腕を抜き、見下ろす。
「イったい……ちょっと!女の子になんてことするのよ!!」
「あいにくフェミニストじゃないんでな。初めからこうすれば良かったのか・・・。じゃあな。」
くるりとルリアに背を向けて歩き出す。
後ろから呼び止める声が聞こえたが気にしない。
数メートル歩いた所に、男が立っていた。
邪魔だなと思いつつ避けて通ろうとしたら、肩を掴まれた。
「なんだ」
「君が緋鬼君だね」
男は、にっこりと俺に笑いかける。
わざとらしい、嫌な笑顔だった。
「あ!」
後ろからルリアの明るい声がした。
顔がぱぁっと輝いたルリアは男に走りよる。
「申し遅れたね。私はルイガだ。
ルリアの父親代わり、ってとこかな。」
ルイガは俺にゆっくりと手を差し出す。
吐き気がする作り笑いで、俺は掴まれた。
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