×人間の街×

10/24
前へ
/68ページ
次へ
「っ!!」 何か嫌な気配を感じ、後ろに下がる。 ルイガの手を見ると、小さな針を持っていた。ルイガは顔を歪める。 「勘が鋭いね。」 「何のつもりだ?」 警戒して向き合う緋鬼に、ルイガは微笑む。 「ちょっと一緒に来てほしいんだ……心配しないでくれ。ただ少し君に興味があるだけだから。」 「説得力のない笑顔だな。」 緋鬼は睨むが、ルイガは表情を変えずに近づいてくる。 「目的を言え。信じられるか。」 「だから、少し話がしたい。」 ルイガは立ち止まると、茶色い清潔なスーツのポケットから何かを取り出す。 「それならこのままでも出来るだろ。言えよ。」 「君みたいな、生意気で自信に溢れたガキは好きじゃないが…………顔は良い。」 ルイガはやれやれといった様子で首を振った。緋鬼は反応に困ってキョトンとする。 「は?…!!? 何すんだてめぇ!」 ガッ!と突然両腕を後ろから捕られる。後ろを見れば、正直忘れていたルリアだった。 「離せ」 同時に、不敵な笑みを浮かべたルイガが近づいてくる……ゆっくりと、威圧するかのように。 「チッ! そ…イッ!!」 バタッ、と石畳に倒れる音が響く。 まだほとんどの住民が起きぬ朝方、倒れる緋鬼を見下ろしてルイガとルリアは微笑んだ。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加