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昔――――――――
“この世界には平等なものなどない。すべては偏り、完全な街も、人間もない。
一方にあって、一方にはない。
この世界はそれによって成り立っている。”
と、親代わりだったババアに教わった。
まるで街の外に出たことがあるかのような言い方だったが、そんな筈はない。
俺の住んでいた街、通称[人形の街]は、その名のとおり人形作りを生業とする街だった。
西洋人形、東洋人形、カラクリ人形、操り人形、ぬいぐるみから呪い人形まで、あらゆる人形が作られる。そのすべての製造方法は街の最高機密…。その流出防止のために、人形の街に生まれたものは、一生街の外に出ることは叶わない。
外に出れば死罪。
ババアは生きていた。外に出たことがあるわけがない。
だから俺は罪人だ。
街で唯一の法を犯してきた。
しかしただの罪人じゃないだろう。奴らは血眼になって俺を探すだろうな…。俺はあの街の裏を知っているどころではない。俺にしか作れない、奴等の長年の夢、最高峰の人形の唯一の製造者だ。
無駄な回想をしていたら見えてきた。
遠目でも分かるくらい大きな黒い塊を中央に据えている街。黒光りした変なオブジェは、街の象徴にしてはやりすぎだな。
とりあえず、あそこに泊まるか。
戦の街。
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