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僕はあの町へ帰らなければいけないと言われた。
別に何かがあるわけでも無いのに…。
もう、誰かがいるわけでもないのに…。
ここはボクが来るには眩しすぎる町だ。
あの人が住んでいた町だからかもしれない…。
「あ、お帰りなさい!」
少し長い薄い碧の髪をもつ少女が近づいてきた。
全く見覚えが無いのにお帰りって…。
誰なのだろう…?
「…キミは?」
少女は驚き、哀しみながら答えた。
「……ホントウに何も覚えてないのね…。あたしは、貴方の妹のシーファよ…」
僕は『ボク』であって『ボク』じゃない。
この体は元々、シーファの兄の体で、『ボク』は偶然この体に目覚めただけなのだ。
本物は『ボク』の体を使っているだろう…。
「よろしくね。」
「兄さん…他人みたいに言わないでよ…」
「『ボク』は、君の兄さんじゃないんだ…。」
「え…?」
やはり、驚いたか…
「『ボク』は、いや、この体は君の兄さんのものだ。だけど、中身は『ボク』であって君の兄さんじゃない。」
「何を言っているの?しゃべり方や癖、声まで同じなのに中身が違うってどういうことよ!?」
彼女は、とても泣きそうな顔で『ボク』に訴えてきた。
「……わからないんだ…」
「…わからない?」
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