穴ジョッキー

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「あぁ~」 人々の落胆と嘆きの声が聞こえてくる。この場所は競馬場だ。 「また志田かよ~」 「あいつはいつも余計なところで突っ込んでくるよな~」 …そう、私は競馬の騎手になって5年目の、世間でいうところの「穴ジョッキー」 普通の家庭…まぁ、親父が競馬好きなこともあり、小さい頃からこの府中競馬場には何度も連れてこられて自然と将来は自分もジョッキーになるだろうなぁと考えてたみたいだ。 幸か不幸か(そんなこと言ったら減量に苦しむジョッキーに失礼か)私は太る体質ではなく、身長の割には体重は軽くてこの商売に向いてるのかもしれない。 でも、まぁこの世界は世間とは少し隔たりがあって、いわゆる「コネ」が実力でもあり、私のような一般家庭からの参戦は少々…いや、大きなハンデとなっている。 私だって好きで「穴ジョッキー」をやってるわけじゃない。 人気のある馬に乗せてもらえないから仕方がないのだ。 競馬学校でも私は浮いた存在で、あまり話す相手もいなかった。 そんな私を見兼ねてか、一人だけ私に話掛けてきた奴が…そう、今や若くして関西No1ジョッキーにまでなった篠原巧だ。 私も運動神経には自信があったが、なにをするにしても篠原だけにはかなわなかった。 おまけにあいつの親父は元天才ジョッキーで、現在も名調教師として何頭もG1ホースを世に送り出している。 当然今のおかれてる状況はあいつと私とでは天と地ほどの差はあるが、あいつも私を多少なりとも認めてるふしもあり、デビューから五年経った今でも親友だ。 騎乗技術でここ関東では誰かに劣るとは少しも思わない私だが、関西のあいつ篠原との差は五年間ずっと縮まってない。 とりあえずの目標は大きいレースで篠原に勝つこと! その為にはまず大レースでの騎乗馬がなければ話にならないんだけどね😅
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