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夏目漱石・・・・本名夏目金之助
「我輩は猫である」、「坊ちゃん」など、ユーモラスな作品から、「こころ」等の人間のエゴに迫る作品まで作品の幅は広い。
最後の作品、残念ながら未完となる「明暗」まで、正に文豪と呼ばれてしかるべき作品をいくつも世に送り出している。
様々な分野に影響を与えているが、その中のごく一部として、手塚治虫が静寂を表す擬音として使用した「シーン」は実は漱石の作品「虞美人草」で静寂を意味するものとして漱石が、「しん」と表現した事からきているという説がある。
「も、萌子ちゃん最高!!」
そんな偉大な文豪が、僕の気持ちなどお構いなしに、素っ頓狂な声をあげている。
偉大な文豪の幽霊が、朝からTVを見て奇声をあげているのだ。
漱石先生は最後に、即天去私の境地に至ったそうだけど、死後は別の境地に至ったみたいだ。
「あの……変な声あげないでくれませんか?漱石先生……」
「だって、だって萌子ちゅわんがぁ」
明治の文豪に萌子と呼ばれるそれは、僕の部屋の片隅の小さなブラウン管の中で、ピンク色の髪の毛をなびかせ奇妙なステッキを振っている。
このような切ない状況になったのは、最近の事だ。
ある朝目を覚ましたら、目の前に先生が立っていた。
見た目はよく見れば旧千円札の面影を確かに感じた。
だけど、あの肖像画のウェーブがかった髪はウェーブというより、トルネードになっていた。
つまり、天パというよりは、アフロとなっていたし、白地のTシャツに、ジーンズというラフな格好は見た目との相乗効果でプロの下着泥棒を連想させた。
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