思イ出

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悪魔の話をしよう。 あれは二年前。 風鈴と扇風機の季節、私は…見てしまった。 兄が…悪魔に取り憑かれるその瞬間を。 そこはうちで唯一の座敷の部屋だった。 その日私は、母が押し入れにしまった浴衣を探して押し入れを探索していた。 でも、探している浴衣はかなり奥深くにしまい込まれてしまったみたいで、なかなか見付からない。 他の浴衣は見付かるのだけど、私が探してる浴衣じゃなかったから、押し入れの奥深くまですっぽりと入って探していた。 夢中になって探していると、すーっ。という音と共に光が細い線になった。 急に辺りが暗くなり、びっくりして息を飲んだ。 振り返ってみると、襖が端が僅かに開いた状態で閉まっている。 私は兄の悪戯かと思い、文句を言おうと口を開く。 けど…兄ひとりじゃないみたい。 「ぇ、…た。」 うっすらと声が聞こえる。 私は、音を立てないように隙間に顔を近付けて耳を澄ます。 「…あの馬鹿の書いたくだらねぇ小説通りの結末になるのは酌だが、親父もお袋も殺された今となってはどうでもいい。俺にはもう何もねぇ」 兄の声。 気になるところが多々あるけど、見付かっちゃいけない気がするので大人しく聞耳を立てる。 「なら話が早い」 男の子の声。 でも、妙に落ち着いた話し方をしている。 シャラン… 何かの音。 会話は終わったみたいだったので、隙間から今度は目を凝らした。
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