思イ出

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「…っ!!」 見た瞬間私はうっかり叫んでしまいそうになり、慌てて口を手で抑えた。 …見しらぬ声の主は、やっぱり男の子だった。 ボロボロのポンチョに沢山の鈴が付いていて、七分丈のズボンを履いている。 …それだけならまだ良かったのだけど。 けど…その男の子の服は、今浴びたかのような生々しい血がべっとりと付いていた。 しかも両手に一本ずつナイフを持って。 シャラ… そして、その男の子の向かっている先は…私が居る押し入れ。 怖くて怖くて、頭が真っ白になる。 私…見付かっちゃう!殺される…!! 男の子は少しずつこっちに歩いてくる。 …けど、微妙な位置を空けて止まった。 「せいぜい楽しませろよ」 あにぃの声。 …そっか。襖を閉めたから押し入れの真ん前に居たんだ…。 あにぃが一歩前に出た。 ズシュッ! 嘘…。 あにぃ…が、刺された…。 ドサ…ッ! 倒れたあにぃの前で、それは…。 ズリュ…ッ。 気持ち悪い音を立ててあにぃの中に入り込んでいく…。 髪の毛の先まで中に消えると、倒れていたあにぃがゆっくりと立ち上がった。 下に落ちていた二本のナイフを拾うと、ベランダへと続く窓へと歩いていく。 その時見た顔は…もう、私の知ってるあにぃの表情では無かった。一切の感情も無く、冷めきった表情…。 あにぃは…完全に取り憑かれてしまった! 姿も音もしなくなって、私は押し入れの中から出る。 お父さんとお母さんに話すために走ってリビングに向かうと、目に映ったのは…。 「あ…ぁ…。お父さん…お母さん…!」 手と足と頭とがバラバラにされた、両親の死体と、部屋中に飛び散った赤黒い血だった…。 あんなの…。 あんなもの…!!男の子でも人間でもない…! 「あれは…、全てを奪い去った悪魔そのものだ!!!」
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